給水装置工事主任技術者 公衆衛生概論の出題傾向
では、まず「給水装置工事主任技術者」試験問題のうち、ある意味で、一番厄介な科目である「公衆衛生概論」について勉強していきます。
何で厄介か?それは、出題数が最も少なく、給水措置工事主任技術者の試験特有ともいえる、足切り点で「1点」を確保しなければいけない点です。
3問出題で1問正解は、30問出題のうち10問正解するより、ずっと難しいです。
問題数が少ないというのは、それだけでプレッシャーです。
ですから、ここでは、しっかりと既往問題(過去出題)を分析し、しっかりと出る問題を確実に叩く!という戦略で行きたいと思います。
公衆衛生概論科目とは
「公衆衛生概論」は「学科試験1」に属します。「学科試験1」には 「公衆衛生概論」、「水道行政」、「給水装置工事法」、「給水装置の構造及び性能」、「給水装置計画論」及び「給水装置工事事務論」で構成されています。出題数は40問です。
2020年度には、一部試験科目構成が変更となり、建設業法と労働安全衛生法等に関する知識については、「給水装置施工管理法」から「給水装置工事事務論」に移っていますので、本ブログでは過去の過去問と分類は少し違いますので注意願います。
本項で勉強する「公衆衛生概論」は出題数、3問です。また足切り点ですが、合格最低基準点は1点となっています。
大まかに出題内容を記述すると、水質基準、残留塩素、口に入る水を供給するための水道施設の構成や役割などについて問われます。
また水道に関する言葉の定義、水道の歴史、過去の水質汚染の事例についても出題されていますので、まずは既往問題を解きながら、徐々に覚えるとよいでしょう。
では、まず、ここ8年程度の既往問題を確認していきます。
給水装置工事主任技術者(公衆衛生概論)勉強の優先順位
上の表を確認しましょう。
一番右に「カテゴリ」別の出題回数を入れておきました。
緑の網掛部の勉強はMUSTになります。時間に余裕があるのであれば、すべて勉強するのもよいのですが、受験者のほとんどは現場から帰って、勉強を毎日できるという状況にないと思います。
その場合には、最低限、緑網掛部はやっておきましょう。
給水装置工事主任技術者 公衆衛生概論の重要ポイント
重要項目1 衛生で安全な水の供給
水道水の塩素消毒
試験で出題される部分を中心に勉強します。
水道で使用される消毒剤は3種類あります。(※3種類の名前について、よく出題されます)
- 液化塩素(液体塩素)
- 次亜塩素酸ナトリウム
- 次亜塩素酸カルシウム
これら3つの消毒剤は塩素系消毒剤といわれるものになります。各消毒剤の特徴は以下のとおりです。
- 液化塩素(液体塩素)は、次亜塩素酸ナトリウムより消毒効果が高い。
- 次亜塩素酸ナトリウムは、光や温度の影響を受けて徐々に分解し、有効濃度が低下する。
- 次亜塩素酸カルシウムは、小規模施設向けの塩素剤である。
はい、これ大事!
液化塩素(液体塩素)
次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸カルシウム
この3つの名前と特徴は必ず覚えておきましょう!
残留塩素
水道水は長い配管内を圧送され、事業所や自宅の蛇口まで供給されてきます。その途中の配管の中には古い配管などもあり、衛生的であるとは言い難い部分も存在するわけです。
また、消毒された水が供給されてきたとしても、塩素などの濃度も薄まっていることも想定されます。
そういった水が我々の口に入るまえに、安全な水すべく、塩素濃度の確保などについて、水道法では規定されています。
残留塩素とは、一般に、消毒効果のある有効塩素分が水中の微生物を殺菌消毒したり、
有機物を酸化分解した後も水中に残留している状態のことをいいます。
はい、これ大事!
残留塩素には、遊離残留塩素と結合残留塩素があります。
遊離残留塩素と結合残留塩素の覚えておくべき特徴
遊離残留塩素には、次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンがあります。また、遊離残留塩素の方が結合残留塩素より殺菌効果は強いという特徴があります。
一方、結合残留塩素の方が、遊離残留塩素よりも残留効果は持続するという特徴があります。
残留塩素の測定方法ですが、簡易測定法として、ジエチル-p-フェニレンジアミン(DPD法ともいいます)を使う比色法があります。
ジエチル-p-フェニレンジアミン(DPD法)と反応して生じる桃~桃赤色を、標準比色液と比較する方法です。※ほかにもありますが、試験ではジエチル-p-フェニレンジアミン(DPD)ばかり出題されます。
重要項目2 水質基準
水質基準は、水道法第4条に規定されおり、また、出題も多い項目でもあります。
- 病原生物に汚染され、または病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物もしくは物質を含むものでないこと。
- シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。
- 銅、鉄、フッ素、フェノールその他の物質が許容量を超えて含まれていないこと。
- 異常な酸性またはアルカリ性を示していないこと。
- 異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味は除く。
- 外観は、ほとんど無色透明であること。
※消毒による臭味に関しては規定されていないことが重要なポイントです。引っ掛けとして、よく出題されます。
水道施設の構成と役割
水道施設の構成
水道施設とは、水道のための貯水施設、取水施設、導水施設、浄水施
設、送水施設並びに配水施設を含む施設のことをいいます。
各水道施設の役割
はい、これ大事!
貯めておき(貯水施設)
貯めたものを、必要時に取り出し(取水施設)
それを導き(導水施設)
飲めるように浄水し(浄水施設)
浄水設備より送水し(送水施設)
需要家に配る(配水施設)
水道水の障害・汚染物質類
水道水の利水障害
試験に出題される主な利水障害の種類は、上の表の4つです。
主に利水障害の内容と原因物質の組み合わせを問われたり、文章題ではどこ由来かを問われる場合がありますので、しっかりと覚えるようにしてください。
水系汚染症の病原生物
この項では、人体の健康に影響を及ぼす、細菌などについて勉強します。、その主な種類と特徴を学習していきます。
病原性大腸菌O-157
病原性大腸菌O-157は、体内に取り込むと、激しい腹痛や下痢、腎不全や血便などの症状を発生します。
小児や老人は、溶血性尿毒症症候群群やけいれん、意識障害などを引き起こすこともあります。
水道での感染予防については、残留塩素の確保が有効となるので、残留塩素濃度を維持することが大切になります。
レジオネラ属菌
レジオネラ菌は、土壌、地下水、河川水など、自然界に広く分布している菌です。 水冷式空調機のクーリングタワー、温泉、循環式浴槽など、常に一定以上の温度を保つような環境下で感染源となります。
レジオネラ感染症は以前、軍人病ともいわれ死者も出す感染症でした。水道での感染予防については、残留塩素の確保が有効な手段となります。
赤痢菌
汚染された水などを介して経口感染します。症状として、発熱、腹痛、下痢といった症状を引き起こします。
水道での感染予防については、残留塩素の確保が有効な手段となります。
クリプトスポリジウム
水様性の下痢症を引き起こす病原原虫です。水環境中などの宿主の外では殻で覆われたオーシストの形で存在します。
このクリプトスポリジウムは、通常の浄水処理でおこなわれる塩素消毒に対して、抵抗性を示します。
ノロウイルス
ノロウイルスに汚染された水などにより経口感染し、下痢、腹痛、嘔吐、発熱などの症状をもたらします。
浄水場で注入される塩素消毒が有効であるとの研究報告があります。
有害化学物質
下記、化学物質などは飲用により体内に取り込むと健康被害を及ぼす危険性があります。水道において、汚染の原因となる化学物質について勉強していきましょう。
水銀
飲料水への混入経路として、工場排水、農薬、下水などが考えられます。水俣病の原因といわれているのは、魚介類に蓄積した水銀が原因物質とされています。
鉛
鉛は、 pH値・アルカリ度が低い水や遊離炭酸の多い水に溶出しやすく、継続的に摂取すると、体内への蓄積により毒性を示します。
造血系、腎臓、中枢神経系、末梢神経系及び免疫系への障害を引き起こすおそれがあります。
飲料水への混入経路として、工場排水や鉱山排水が考えられます。
一方、水道水で、どのような水に鉛が溶出しやすいかと出題されることがあります。
鉛製給水管からの溶出が多いというのを併せて覚えておきましょう。
ヒ素
ヒ素の飲料水への汚染経路は鉱山排水、工場排水等に由来することが多いです。海外では、飲料用の地下水や河川水がヒ素に汚染されたことによっておこる、慢性ヒ素中毒症が報告されています。長期間にわたって少量ずつ摂取した場合の中毒症状として、末梢神経障害、皮膚がんなどを引き起こすことがあります。
フッ素
飲料水への混入経路は、地質、工場排水などが原因である場合が多いです。適量の摂取は虫歯予防効果があるといわれるが、過度に摂取すると、斑状歯(はんじょうし)や骨へのフッ素沈着、骨折などを引き起こす恐れがあります。
※斑状歯とはフッ素の過剰摂取によって引き起こされるエナメル質形成不全症のことです。
トリハロメタン類
水道原水中のフミン質などの有機物質が、浄水場で注入される塩素と反応し、浄水処理や給配水の過程で、発がん性物質として疑われるトリハロメタン類が生成されます。
シァン
シアンの飲料水への混入経路は、メッキ工場、精錬所などの排水に由来するといわれています。
硝酸態窒素・亜硝酸態窒素
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素は、窒素肥料、家庭排水、下水などに由来するものである。乳幼児が経口摂取することで、急性影響としてメトヘモグロビン血症によるチアノーゼを引き起こします。
公衆衛生概論まとめ
過去8年間の既往問題(過去問)の傾向に絞って、重要点をまとめました。
公衆衛生概論は必ず1問、正解する必要があるのですが、ここ8年で5問出題されている「残留塩素」4問出題されている「水質基準」「水道施設とその機能」、3問出題されている「水道の利水障害」「化学物質の飲料水への汚染原因と影響」「水系感染症」
これらは必ず、マスターしましょう。
クイズで勉強したアウトプットをしてみてください! 公衆衛生概論クイズはこちら