1級電気工事施工管理技士(二次試験)施工経験記述の設問と解答のルール
施工経験記述の重要性
施工経験記述は、二次試験合格に避けては通れない最重要の設問になります。
公表がはされていませんが、施工経験記述は他の設問より配点が高いとされています。約40%とも言われていますが、未公表のため定かではありません。
ただ、1つ確かなことは、施工経験記述を攻略しない限り、合格はありえません。
私が、長く指導してきた経験より、施工経験記述を完璧に準備し、法令と用語をほんの少し正解するだけで充分、合格点に達します。
反対に、施工経験記述を疎かにし、ほかの設問を完璧にできたという場合でも不合格という例が少なくありません。
年に1度しか、受検できない試験です。また来年も受検しないためにも、しっかりとした「施工経験記述」の準備をしていきましょう。
施工経験記述問題を出題する目的を考える
施工経験記述という設問は、あなたが、施工管理責任者として、申し分のない能力や資質を持っていることを見極めるためにあるのです。
本来なら技術士の口頭試問のように、面接で、施工管理能力を見極めたいのですが、施工管理技士の受検者は多いので、そんなことはできません。
だから、「施工経験記述」に記述した内容で、施工管理責任者としての能力を見定める必要があるのです。
1級電気工事施工管理技士試験 施工経験記述で合格する人と不合格になる人
ではどういう人が「施工経験記述」の内容を評価され、また、評価されないのかを考えていきます。
施工経験記述で評価される人・されない人の違い
つまり、現場で施工管理技士としての能力は十分あるんですよ!とアピールができないと評価されないんです。
1級電気工事施工管理技士 3つの基本と5つの「施工経験記述」解答ルール
基本1.どうしても合格する!という意思を見せる
解答欄の行数分、全て埋めるよう記述して余白を残さないようにする。 最低でも80%は埋めたいです。
自分が採点者で空白が多い経験記述を見てどう思いますか?
「やる気がない」と判断されるリスクがあります。
基本2.オリジナルの文章で勝負!
参考書類の施工経験記述例の例文書写しはダメです。 オリジナルであることが必須条件となります。
特に電気工事施工管理技士に限ったことではありませんが、施工経験記述の添削をしていると、「品質管理」の資材受け入れなどは5人中4人くらいは、ほぼ同じ内容で提出されてきます。
これは、書くことに困り、参考書をほぼ丸写しにしているからなんです。我々講師や採点者は、出版社などから本を提供されていることが多いため、ほぼ全部の書籍に目を通していることが予想されます。
丸写しの文章は、バレると「現場経験がないのでは?」と疑われるリスクがあるので注意してください。
基本3.自分の体験を記述する
よく、自身は経験がない(少ない)などの理由で、「先輩の施工経験記述を、そそまま丸写し」なんて例をよく耳にします。
それはやめてください。その先輩の施工経験記述をそのまま覚えても、もし、問題に変更が生じたら?設問方法が突然変わったら?
自身がその現場に携わっていたら、試験場で対応することはできるでしょう。でも丸写しだと対応できないことが予想されます。
昨今、大企業の施工管理技士資格取得に絡み、不正が発覚して「免状のはく奪」という事例が後を絶ちません。
採点者はプロです。本当に解答者が自分で受け持った現場か文面から読み取ります。よって、現場にいなければわかり得ない、具体的な数値やデータを記載して記述の具体性、信憑性を高めるようにします。
「施工経験記述」5つのルール
- 誤字脱字は厳禁です。優先順位は①漢字を使用する。②漢字をど忘れした時には、平仮名などにする。(漢字を間違えると減点なので、それよりはマシ!) となります。
- 字は丁寧に書く。きれい、きたないではありません。採点者は1日に相当数の解答を採点します。字が細かくて、そのうえきたなかったら、ゴミ箱に捨ててしまいたくなる気分になるのではないでしょうか。私自身、添削は1日30枚くらいしますが、次が小さかったりすると、見るのが嫌になったりします。。。
- 現場での工夫を記述する。誰でもできるような参考書に記載のある内容に加え、あなたが、その現場で考え工夫した内容も記述しましょう。
- 冗長な文章はダメ。冗長とは、長々しく無駄の多いような文章のことです。解答欄の行数は限られています。自分の能力を端的に示すには、無駄がなく、現場での施工管理能力を発揮した内容をすべて盛り込む気持ちで書くので、無駄な文章はいりません。どうしても長々しくなりそうなら、箇条書きを利用して、長くなる前に短文に区切ります。
- あなたは現場の責任者です。その意識で書かないとダメ。添削をしていて、よくあるのが「職人目線の記述」です。この試験は「施工管理技士」です。「施工」つまり、工事を行うのは職人であり、それならば「電気工事士」でよいはずです。
職人は指示され、施工する人。施工管理技士は、意思決定を行う責任者であり、指示する側の人です。そこを忘れてはいけません。
つまり、文尾はすべて断定すべきです。 例:●●をさせた。などです。
●●した。と書くと、あなたが指示したのではなく、ただの作業員となってしまい、責任的立場で従事していないと見なされます。注意が必要です。
どうでしたか。これら5つの視点を頭の中に置きつつ、記述を行っていきましょう。
1級電気工事施工管理技士 施工経験記述の記述方法
まずは、実際の施工管理技士の「施工経験記述」を「工事概要」と「設問」について見ていきます。
※下記(1)から(6)を工事概要と定義します。
(1) 工事名
工事名は自分で担当した現場名、電気工事名を記述します。この際、「〇×電気工事」などではなく、受験票に記載のある下表(実務経験として認められる工事種別・工事内容)を記述することを推奨します。
例:「●×ビル新築工事に伴う▲●電気設備工事」よりも、「●×ビル新築工事に伴う屋外照明設備改修工事」の方が望ましいです。
もしくは「●×ビル新築工事(屋外照明設備改修工事)」のように、自分が携わった工事が、実務経験と認められる工事のうち、下表のどれに該当するかを明確にする必要があります。
実務経験として認められる工事であること。
これは「管工事」や「土木工事」などと判断されない
必要があるからですね。
引用元 一般財団法人 建設業振興基金
(2)工事場所
工事場所は、実際に(1)に記述した現場の住所を記述します。では、住所はどこまで記載するのがよいのでしょう。
住所は「東京都●×区▲◆1-2-3」のように番地まで記述します。昨今の経歴偽造などの件もあり、自分で実際に携わった現場だと、どうどうと記述しましょう。
(3)電気工事の概要
(ア)請負金額(概略額):請負金額ですが1級の場合には1000万円以上が望ましいです。しかし数百 万円で記述したら合格しないかというと、そういうわけではありません。
しかし、例えば請負金額200万円で、資材費が180万円、工費が20万円の工事で管理能力を問われても、??ですよね。
なるべく自分が携わった中で、費用の規模が大きいものを選定した方が、記述もしやすくなります。
また、ゼネコン勤務などの場合、新築工事であったら、建築や設備を除き、電気設備工事だけの金額で記述しないといけません。
例えば「請負金額 185,880,000円(内、電気設備工事 65,200,000円)」などの記述もよいですね。
500万円未満の工事は建設業法上の「軽微な工事」と
なるので施工経験記述の題材としては不適当となる
危険性があります。
(イ)概要:この概要欄は、受検者に勘違いされやすいのですが、採点者は、工事名称と請負金額。加えて、この概要で工事規模を把握します。
ですので、この概要には機器数量を入れることが重要になります。
例:三相変圧器 100kVA×2台、単相変圧器 150kVA×1台、75kVA×2台。動力盤×2面、電灯盤×4面 CVT38sq×●●m、CV22sq×▲◆mなど。
工事の仕様書等に準じて記載しますが、記載欄が小さいため、はみ出さないように縮小気味に記載する必要があります。
(4)工期
工期記述時の注意点
工期は直近、5年以内くらいに施工した工事を選ぶようにしましょう。工期は上記の施工数量などと不整合とならないことが重要です。例えば、工期が1年なのに太陽光パネル20枚などもおかしいですよね。
金額との整合もしかりです。例えば、2億円の工事物件が1週間で完了するのもおかしな話です。
題材として工期が短すぎないものを選ぶこと。最低でも1月程度を要した工事を選ぶとよいでしょう。
また、例えば、3日で終わる工事では本来、試験で問われる「管理能力」を発揮したとは見なされないわけです。これは注意しておきましょう。
工期の書き方
①西暦での記述:2021年4月~2022年1月
②和暦での記述:令和3年4月~令和4年1月
そちらで記述してもOKです。いずれにしましても、受検時には完工していることが条件です。
あなたの立場
施工経験記述は、施工管理の責任者として申し分のない能力、資質を持っているかを見極めるための試験であるため、会社での立場は全く加味されません。例えば、「施工管理課長」や「電気工事部長」などの会社での肩書は無意味になります。
「あなたの立場」の記述例
立場ですが大きく分けて3つあります。それぞれの立場で、どう記述したらよいか見ていきます。
発注者(施主)としての経験
施主の立場で設計監理を行った経験
請負者としての経験
あなたが担当した業務の内容
請負者の立場としての記述例:太陽光発電設備工事全般の施工管理(施工管理は請負者の立場で現場管理をした場合に使用できます)
発注者(施主)の立場での経験
●●工場変電設備改修工事における工事監理業務全般(工事監理は施主など発注側で施工監督を行った場合に使用する)
発注者の立場に立って行った設計事務所などでの経験
●●工場変電設備改修工事における施工監督業務全般(設計事務所勤務など)
請負者の立場での経験
●●工場変電設備改修工事における施工管理業務全般
例えば、ここでの「施工管理業務全般」の全般の意味は、「工程管理」「安全管理」「品質管理」全てに携わりましたよということを示します。
添削の時に、たまにあるのが”●●工場変電設備改修工事における安全管理業務”というようなものです。
これでは、現場で安全管理にしか従事していなかったことがわかります。ところが、試験では
「上記の電気工事の現場において、施工中に発生した又は発生があると予想した工程管理上の問題とその理由を 2 つあげ、これらの問題を防止するために、あなたがとった対策を問題ごとに 2 つ具体的に記述しなさい。」という問いに答えられないはずです。
だって、安全管理だけしか預かっていなかったので、対策を立てたのはほかの担当者だったはずです。ですので、すべての管理を自分の手で行ったということを示す必要があるのです。
1級電気工事施工管理技士 施工経験記述の工事概要記述まとめ
(1) 工事名
「●×ビル新築工事(屋外照明設備改修工事)」など、実務経験に定義された電気工事の種別がわかるように記述します。
(2)工事場所
住所は都道府県名から番地までできる限り記入します。
(3)電気工事の概要
(ア)「電気設備工事」に関する金額を明記します。
(イ)概要は、工事規模がわかってもらえるような機器数量を記入します。
(4)工期
工期は最低でも1か月は要する工事を選定します。これは管理したというには、それくらいの期間が必要と思われるためです。
工期の書き方
西暦でも和暦でもOKですが、すでに完工している物件について取り上げます。
あなたの立場
あなたが施主としての立場であれば、「現場監督員」など
あなたが請負者としての立場であれば、「工事主任」「現場代理人」「主任技術者」などと記入します。
「あなたが担当した業務」の内容
施主として受験するなら●●工事における工事監理業務全般
請負者として受験するなら●●工事における施工管理業務全般
本日は以上です。